こんにちは、現場の基礎屋・塩津です。兵庫県で住宅の基礎工事を専門にやっています。
「ブランドで決めたから、アフターも安心やと思ってたのに、対応が最悪で困ってる」── 現場に出ていると、こういう声を施主さんから聞くことが本当に多いです。私は基礎屋として、大手ハウスメーカーから町の小さな工務店まで、いろんな会社の現場に入ってきました。そこで強く感じるのは、「どのメーカーで建てるか」より「どんな人と一緒に建てるか」のほうが、家の満足度を大きく左右するということです。
契約を取ることだけが目的になってしまっている会社なのか、それとも施主さんに寄り添おうとしてくれている会社なのか。この見極めができるかどうかで、家づくりの体験はまるで変わります。この記事では、現場の人間だからこそ見えている「会社選びの本音」と、契約前にやってほしいことを、できるだけ素直にお伝えします。
そもそも「どこで建てるのが正解」はない
はじめに大事なことを言っておきます。「大手ハウスメーカーが正解」「町の工務店が正解」という単純な答えは、現場の感覚としてもありません。どちらにもそれぞれの良さがあって、それぞれに合う施主さんがいます。
大手ハウスメーカーの良さ
大手ハウスメーカーは、何といっても「アフターサービス込みの安心感」が魅力です。10年、20年経ったあとの定期点検や、トラブルが起きたときの相談窓口が整っています。家を建てた後の長い付き合いを考えたときに、組織として対応してくれる体制があるのは、施主さんにとって心強いポイントです。
町の工務店の良さ
一方、町の工務店は、コストを抑えやすかったり、設計の自由度が高かったりします。社長や担当者と直接話せるので、こちらの希望が反映されやすい。地域に根ざしているぶん、「このへんの土地はこういう癖がある」というローカルな知見も持っています。
ただし、ここは正直に書いておきたいんですが、町の工務店の中にも契約後にどんどん追加費用を上げてくる会社はあります。「町の工務店=良心的」と決めつけてしまうのも、ちょっと危ないんですね。逆に、大手ハウスメーカーでも、現場一つひとつに誠実に向き合っている会社はちゃんとあります。
だからこそ、施主さん側で「自分が家に何を求めているのか」「いくらまでなら出せるのか」をしっかり整理してから、会社と話し合う必要があります。そのうえで、私が現場で何度も実感してきた一番大事なことを言わせてください。
家は、誰と作り上げていくかが一番大事です。
そして、ハウスメーカーで建てようが町の工務店で建てようが、結局、現場で家を作るのは職人で一緒なんです。設計図を引く人がいて、現場を仕切る監督がいて、基礎屋がいて、大工がいて、屋根屋、左官屋、設備屋……何十人もの職人の手を通って、ようやく一軒の家ができあがります。会社の看板が違っても、手を動かしているのは同じような人間なんですね。
作る人は同じ職人。じゃあ何で差がつくのか
「作る人が同じなら、どこで頼んでも同じやん」と思われるかもしれません。でも、現場には確実に差が出ます。それは、会社が職人とどう付き合っているかで決まります。
職人を大切にする会社か、コマとして使う会社か
正直なところ、大手ハウスメーカーの中には、職人に対してあまり寄り添ってくれない会社もあります。たとえばコンクリートには、固まるまでにきちんと時間を置いてあげる「養生期間」という工程があります。これを十分取らないと、本来の強度が出ません。ところが「工期最優先」で、その養生期間を削るような指示が来ることもある。職人としては「これでええんかな」と思いながら、でも会社対会社の関係で言いづらい、という場面が起きます。
単価面でも、メーカー側の決まった金額で動かないといけないので、職人がしんどい思いをすることもあります。しんどい現場が続くと、どうしても気持ちに余裕がなくなります。
逆に、私が「こことは長くやりたいな」と思える町の工務店は、こちらの意見をちゃんと聞いてくれます。「来週このタイミングで生コン打てそうですか」「天気これくらいやけど大丈夫ですか」と毎現場ごとに連絡をくれて、無理な工程を組まない。職人を「コマ」じゃなく「一緒に家を作るパートナー」として扱ってくれる会社です。こういう現場は、自然と仕上がりも良くなります。
「検査基準」が厳しいことが必ずしも品質ではない
もう一つ、現場でよく感じることがあります。ハウスメーカーの中には、検査の基準がやたら厳しいところがあります。基礎の配置が数ミリずれてないか、高さが何ミリ以内か、表面のキズがどうとか。もちろんルールに沿うのは大事なんですが、正直「そこ、家の強度には関係ないところやで」という部分にやけにこだわる現場もあります。
そして本当に大事な部分── たとえば「鉄筋のかぶり厚」と呼ばれる、鉄筋がコンクリートにどれだけ覆われているかという数値── これは家の耐久性に直結する超重要ポイントなんですが、検査でそこまで丁寧に見られることは少ないんですね。
配置の数ミリには厳しいのに、本当に大事なかぶり厚は誰もちゃんと見ない。これは現場の人間としての本音です。検査項目の多さや厳しさが、必ずしも家の品質と一致していない場面はあります。
私が「この会社とは仕事しない」と決めている基準
私自身、長年現場をやってきて、付き合う会社を選ぶときに見ている基準があります。施主さんにも参考になると思うので書きます。
- 金額を値切ろうとしてくる会社 ── 基礎工事って、家の一番大事な土台を作る工程です。そこで金額を削ろうとする会社は、他のところでも同じ感覚で動いている可能性が高い。そうなると仕事も雑になりがちです
- こちらの意見を全く聞いてくれない会社 ── 現場の状況や提案を一切受け付けず、「とにかく決められた通りに」しか動かない会社とは、いい家が作りにくい
逆に、長く付き合いたいと思える会社は、監督がちゃんと現場の検査に来てくれて、一緒に家を作り上げていける工務店です。そして、ちゃんとした仕事に対して「価値を感じてお金を払ってくれる」会社。これは職人にとっても、最終的には施主さんにとっても、本当に大きい違いです。
もう一度言いますが、これは「大手はダメ、町の工務店が良い」という話ではありません。大手の中にも誠実な現場はたくさんあるし、町の工務店にも残念ながらアカン会社はあります。会社の規模ではなく、職人や現場とどう向き合っているか。それが、結果的に家の質に出てきます。
施主の最大の武器は「営業の人柄」を見抜くこと
とはいえ、施主さんが現場のことを全部判断するのは無理な話です。図面の良し悪しも、職人の腕も、専門知識がないと見抜けません。じゃあ何を見ればいいのか。
私は、施主さんが一番判断しやすく、しかも当たる確率が高いのは「営業担当の人柄」だと思っています。なぜなら、営業の人は、その会社が普段どういう姿勢で仕事をしているかを映す鏡だからです。
信頼できる営業の特徴
- わからないことを「専門の人に確認します」と正直に言える ── 知ったかぶりをしないのは、家づくりにおいて何よりの誠実さです
- こちらの意見を汲み取って、「したいこと」と「現実的にできること」を整理して伝えてくれる
- 「ここまではできます。この部分は現場の状況で判断します」と事前に説明してくれる ── 家づくりは想定外のことが必ず起きます。それを最初から共有してくれる人は信頼できます
- メリットだけでなくデメリットも正直に話す ── 良いことしか言わない営業は、後で必ずどこかで歪みが出ます
- 約束を守る、連絡が早い ── 当たり前のことに聞こえますが、これは本当に大事です
とくに最後の「約束を守る・連絡が早い」は、地味やけど一番大事です。信頼って、こういう小さなことの積み上げでしか生まれません。打ち合わせの段階で約束を守れない人が、契約後に急に誠実になることはまずありません。
注意したい営業の特徴
- 「今日中に契約してくれたら値引きします」「頭金を入れてくれたら安くなります」と条件付きで急かしてくる
- 約束した期限や提出物を平気で遅らせる
- メリットだけを強調して、デメリットを聞いても曖昧にかわす
家は、人生で一番高い買い物のひとつです。「今日決めないと損ですよ」と急かす営業に、いい仕事をする人はいないと私は思っています。
営業の人柄をどう見抜くか、具体的に
「人柄を見ろと言われても、どうやって?」と思いますよね。具体的にやってほしいことを書きます。
- あえて専門的な質問をしてみる ── たとえば「基礎の鉄筋ってどれくらいの太さ使うんですか?」と聞いてみる。「正確な数字は確認します」と持ち帰る人は信頼できます。曖昧に流す人や知ったかぶりをする人は要注意です
- デメリットを直接聞く ── 「この工法のデメリットは何ですか?」と聞いて、しっかり答えられる人は誠実です
- 連絡のレスポンスを観察する ── メールや電話への返信スピード、約束した期日に資料が届くかどうかを見ておく
- 最低でも2〜3社の営業と会って比較する ── 一社だけだと判断軸ができません。複数社と話して初めて、その営業の対応が良いのか悪いのかが見えてきます
営業を見極めるには、やっぱり複数社と実際に会って比べてみるのが一番の近道です。最初の入り口として、まずは資料請求から始めてみるのもアリです。
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契約後の追加費用を防ぐ ── 施主自身の準備が9割
「契約してから追加費用がどんどん膨らんで、最初の見積もりとぜんぜん違う金額になった」── これも家づくりでよく聞く話です。
正直に言うと、契約前の段階で「この会社は追加費用を上げてくるかどうか」を完璧に見抜くのは、とても難しいです。一番現実的なのは、その会社で実際に建てた人の口コミを聞くことですが、それでも100%は分かりません。
でも、ここで本質的なことを言わせてください。追加費用がふくらむ最大の原因は、会社側の問題というより、施主さん自身が「自分はどんな家を建てたいか」を契約時点で固めきれていないことにあるケースがとても多いです。
「したいこと」が固まっていないまま打ち合わせに入ると、家が形になってきた段階で「やっぱりここに収納がほしい」「コンセントを増やしたい」「やっぱり床材変えたい」と、後出しの要望がどんどん出てきます。これがそのまま追加費用になります。
だから、契約前にぜひやってほしいのが、ご夫婦で家に対する優先順位を整理しておくことです。
- 絶対に譲れないこと(例:対面キッチン、書斎、駐車場2台分)
- できれば叶えたいこと
- 妥協してもいいこと
- 予算の上限(これは絶対に超えないライン)
ここを夫婦間で先に話し合っておくだけで、打ち合わせの精度が変わります。営業さんも「この施主さんは軸がしっかりしてるな」と感じて、対応が引き締まります。施主さん側の準備が、最終的には会社の対応の質まで引き上げてくれるんですね。
契約前に必ずやってほしい、たった1つのこと
ここまでいろいろお伝えしてきましたが、現役の基礎屋として、最後に一番伝えたいことがあります。
気になる会社がいくつかに絞れたら、ぜひ建築中の現場を実際に見に行ってください。
モデルハウスじゃなくて、今まさに工事をしている本物の現場です。営業さんに「御社が今工事している現場を見せてもらえますか?」と聞いてみてください。気持ちよく案内してくれる会社は、自分たちの仕事に自信がある会社です。
現場で見るべきポイントは、たった2つ
専門知識がなくても、施主さんの目で十分判断できるポイントが2つあります。
① 現場が片付いているか
これは本当に大事です。現場が散らかっていて道具や資材が乱雑に置かれていると、職人の足元や通路が確保できず、作業の流れが悪くなります。視覚的にも、必要な道具がどこにあるか分からない状態では、ミスも起きやすい。
シンプルに、片付いていてスッキリ仕事ができる現場のほうが、いい仕事ができます。これは私たち職人が日々肌で感じていることです。現場の整理整頓は、その会社や監督の仕事に対する姿勢を、何より雄弁に語ります。
② コンクリートの「ジャンカ」が出ていないか
もう一つ、ぜひ見てほしいのが基礎の側面です。コンクリートの表面が、ツルッとなめらかに仕上がっているかどうかをチェックしてください。
もし表面に砕石(細かい石)が表に見えてしまっていて、ガタガタしている部分があったら、それは「ジャンカ」と呼ばれる施工不良です。本来はモルタル(セメントと砂を混ぜたもの)が骨材を覆って表面を作るんですが、それが行き渡らず、骨材だけが浮き出てしまっている状態です。
- 小さな気泡(プツプツした穴)程度なら問題ありません
- 石が見えるくらい表面がガタガタしていたらアウトです
なぜジャンカが問題なのか。実は、ジャンカそのものよりも「ジャンカができている状態をそのままにしていること」が問題なんです。
正直に言えば、施工していたらどうしてもミスは起きます。ジャンカもそのひとつ。これは仕方のない部分があります。でも大事なのは、ミスをそのままにせず、きちんと補修してから次の工程に進むことです。ジャンカは補修できます。だからこそ、それを補修せずに放置している現場は、職人や監督の姿勢に問題があると見ていいと思います。
放置されたジャンカからは、水と空気がコンクリート内部に入り込みます。すると、中の鉄筋が腐食してサビていきます。鉄筋がサビると膨張して、まわりのコンクリートを割ってしまう。これが進むと、家を支える基礎の構造強度そのものが落ちていきます。
ジャンカは、コンクリートが鉄筋をしっかり覆いきれていない「かぶり厚不足」のサインにもなります。だからこそ、家の寿命を左右する大事な部分なんです。現場で見つけた時に、きちんと補修してくれているか。ここを見ることが、その現場の仕事ぶりを判断する一番のポイントになります。
※ジャンカの実例写真は、現在現場で撮影できしだいこの記事に追加していきます。
正直に言うと、鉄筋の組み方の細かい部分や、配筋の定着の良し悪しまでは、素人さんが見抜くのは難しいです。でも、「片付いているか」と「ジャンカが出ていないか」── この2つだけでも、その会社の現場品質はかなり判断できます。
そもそも、家を建てるうえで「基礎」がどれだけ大事か、まだあまりピンとこない方は、こちらの記事も合わせて読んでみてください。基礎の種類とその違いを、現場目線で解説しています。
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まとめ ── 「どこで建てるか」より「誰と建てるか」
長くなりましたが、最後にお伝えしたいことを整理します。
- 大手ハウスメーカーにも町の工務店にも、それぞれの良さがあります。「正解」はありません
- 家を実際に作るのは、どの会社で建てても職人です。差がつくのは、会社が職人や現場とどう向き合っているか
- 施主さんが見抜きやすいのは、営業担当の人柄。誠実な営業がいる会社は、現場も誠実なことが多いです
- 追加費用を防ぐためには、施主さん自身が「どんな家を建てたいか」を契約前に整理しておくことが何より大事
- 気になる会社が絞れたら、建築中の現場を実際に見に行ってください。「片付いているか」と「コンクリートにジャンカがないか」を見るだけで十分です
家は、ブランドや工法のスペックで決めるものじゃありません。誰と一緒に作り上げていくかです。営業の人柄、現場の質、そして施主さん自身の準備。この3つがそろえば、どの会社で建てても、きっと納得のいく家になります。
そして、その判断のスタートとして、まずは複数社の資料を実際に並べて比較してみてください。会社ごとの考え方や見せ方の違いだけでも、けっこういろんなことが見えてきます。
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